今年度馬場先生の授業を受けて、この春休み2週間実習しました。
今週帰国しまして、私の実習についてお話ししたいと思います。
私はパリの大学病院の整形外科で実習しました。
いわゆる観光客向けの地域ではないので、普通のフランス人の日常に入り込んだような気分でした。
まず実習内容について。
1.こちらでは先生のつてをつたって、いろいろな病院を見学させていただきました。
オペ見学を含め、私立病院国立病院を見比べることができました。
フランスの医学部はほぼ国立なのですが、国立病院はやはり趣があるというか、古いです。
地震がないのも幸いして古い建物を残せるのでしょう。
2.カンファレンスでは上の先生に対して若い先生がはっきり意見を言って議論し合うのが印象的でした。
1人の患者さんにとっても時間をかけて議論します。
しかし自分の担当が終わるとタバコ吸いに行ったりカフェに行ったりとても自由です。
日本だとカンファレンス中に席を立つなんて電話がかかってきたときくらいなのになー、と少しびっくり。
でも、17時には帰りたいみたいです。
それだけ時間をかけたいし早く帰りたいなら、昼休み3時間も取らなければいいのにと思ってしまう私でした。
3.フランス人は、あまり英語ができないのか、できても話したがらないのでフランス語で話しかけないとあまり、心を開いてくれません。
他の国はどうかわかりませんが、確かに自大学に海外の学生さんがきたら、私たちも日本語でコミュニケーションとりたいですよね。
それにもましてこの国はフランス語話せない人にとても冷たいです。
疑問なのは、日本に来る観光客に私たちは日本語で話しかけたりはしないじゃないですか、でもこの国はアジア人の顔をした私にも平気でフランス語で話しかけてきます。
母国愛、なのでしょうか?
私は幸いなことにフランスで生活していたこともあり、またコミュニケーションをとれるように、フランス語の検定試験を5年生の前半たくさん受けたので、なんとかなりました。
もっとレベルの高いことをフランス語で話せたらと思うこともしばしばありましたが、その点英語は偉大です。
少々文法が間違っていても単語がお互い分かれば通じて、とても助かりました。馬場先生、ありがとうございます。
その中でも医学英語が通じる人と通じない人がいます。
日本と同じですね。
今回他国に行って思いましたが、日本にいるから日本の医学用語しかわからないというのはその人個人が不便というより、他の国の人とのコミュニケーションの機会を絶ってしまいかねないです。
ひしひしと重要性を痛感しました。
教授など上の先生になると、英語でも医学用語を話してくれるので助かりました。
英語は初対面の人と話すのにも大切なツールですね。
epilepsy でfracture した
というのも事前に馬場先生に教わらなければ「?」でした。
4.外科というと日本では女医さん少ない、勤務忙しいといったイメージかと思いますが、こちらはみなさんとってもアフター5を大事にされるようで、研修医でも当直がなければ16時に帰れることもあるそうです。
女医さんも外科でも多いです。半分くらいいます。
上の先生が帰るまで待ったりしません。
オペは14時頃までに必ず終わらせます。
そうでないと麻酔科の先生が帰ってしまうそうです。
日本の勤務形態を言ったら、すごく驚かれて、「効率が悪いんじゃないの」みたいなこと言われてしまいました。
バカンス4.5週間もとれるフランス人からしたら、そう思うのかもしれませんね。
まずもってフランスは、人口が日本の半分な一方で、医学部生の数は1学年8300人とあまり変わらないので、人口1人あたりの医者の数は単純計算で倍です。
さらに日本より、手術をする基準が高いように感じました。
これがその勤務時間の差を生んでいるのではないかとおっしゃる先生もいらっしゃいました。
全体を通して強く感じたのは、働く概念の違いです。
個人主義が強いので相手に合わせたりはしません。自分の仕事終わったら帰る、人には頼らない、というスタンスですが、その分相手の仕事も大目に見ないといけないようです。
美術館やメトロのストライキにも似たものを感じました。
5.外来にて
大学病院の外来は紹介予約制らしく、日本のように忙殺されているようには感じませんでした。
また、皆さん紹介予約でいらっしゃる前にかかっていた病院などで撮ったレントゲンを持参します。
こちらでは安易に薬を処方しません。足が痛いと泣いて訴える患者さんにも、画像所見上問題なければ何もせずにかえします。
日本だとロキソニンなど処方しているイメージですが。
そして驚きだったのは秘書さんがカルテを打っていることです。
秘書さんがいない場合はレコーダーに吹き込みます。
パソコンに向き合ったりしません。1人ひとりに時間をかけて丁寧に診察します。
痛くて薬を出してもらえなくても、先生に診察してもらって肩を叩いてもらうと皆さん安堵の表情でした。
診察の重要性が垣間見えました。
また、日本での常識がこちらでは常識でないことも多々あります。
たとえば、心筋梗塞を疑ったら日本ではすぐ心電図を取るかと思います。
しかしこちらでは、患者さんに胸をはってもらって、筋肉や骨を強く押すそうです。
これで痛がっていたら心臓じゃないので一安心、とのことでした。
6.オペに関して言うと、学生が大きな戦力になっています。
消毒などの準備含め学生の仕事です。
みんな術野に入れて、解除 介助や機械出しをします。
私も加わったのですが、日本と手袋のはめ方が違い(机に置かず、両手でつまみながら指先を触らないように手袋を取り出しはめる)もたついてしまいました。
そして驚きなのが全身麻酔が少ないことです。
関節置換術くらいの侵襲がないと神経ブロックなどで麻酔しています。
全身麻酔はコストもかかるし、事故が多いじゃない?とのことでしたが、患者さんが麻酔科の先生と談笑しながらブルーシートの向こうで手術が行われているのはなんとも不思議でした。
こちらでは外回りさんはいるのですがオペかんさんは見当たりません。
学生を、将来の医者として扱ってくれるので私はとても嬉しかったです。
7.研修医について
ジュニアレジとシニアレジがいます。
ジュニアはなんと5年もあるとか。日本と違いconcours (後述)ですでに専門を決めているのですが、半年ごとに病院を変えてローテーションしているそうです。大変ですね。
長くなりましたが続いてフランスの医学部についてです。
1.まず医学部に進学してから、1年次の終わりに大きなテストがあり、2割しか2年生に進級できないそうです。
この試験は1浪しかできないので、それでも受からなかった人は他の学部に進むそうです。
シビアですね、、
学生の勉強のモチベーションは、concours という6年次に受ける国家試験です。
ほとんどみんな受かるそうですが、この成績で専門の科や働く県が決まるそうですから大変です。
人気のある科は、眼科や皮膚科。お給料がいいそうです。
小児科は忙しいのにお給料があまり良くないらしく、フランスでも深刻な問題みたいです。
日本では成績に関係なく専門が選べますよね、このことを初めて幸せだと思いました。
2.こちらでは、隣国のドイツも同じらしいのですが、医者の7割が女性です。
おかげで女子学生が多く、話が弾みます。
日本では男子が7割だよ、ここみたいに病院内に託児所なんてあるところ多くないし〜、結婚出産は女医さんにとって大変な転機なんだよと話すと
「日本は考えが本当に遅れているのね」と呆れ顔というか、引かれました。
「そんなの差別じゃない。訴えられるよ」という人もいました。
きっとフランスではありえないことなんでしょうね。
ご飯を作るのは旦那さんの仕事という家もあるそうですから、女子は家事をするという考えがなさそうです。
家政婦さんを積極的に雇います。
あまり家に人を上げない日本人だと抵抗がありそうですね。
こちらではお金のある人はお金のない人に仕事を与えるべきという考えが根底にあるようです。
それを聞いて、もちろん1人ひとりの既成概念を変えるのはとても難しいことですが、「女子だから〜」という理由で選択の幅を狭めたくないなと強く思いました。
3.学生実習について
こちらの学生は、大学にもよるそうですが、3年生から実習をします。
3年生は午前病院で午後は講義、
4.5.6年生は一日中病院だそうです。
病棟で学生がしていることといえば、受け持ち患者さんの発表ですね、12人くらいいて、研修医にききながら上の先生に発表しています。
以上長くなりましたが、毎日新しく知ることが多く、とても充実した2週間でした。
行く前はビクビク、不安で仕方ありませんでしたが、自分が思っているより誰も私のことを気にしていないと気づいてからは積極的な話しかけることができ、知り合いが増えました。
特に女子学生と仲良くなれたことが、私は嬉しかったです。
これを読んでいてくれるであろう後輩の人たちは、何かあったら質問してくださいね。
私もこの先輩方のブログを2度全部読んで、気になるところを紙に書き留めてとても参考にさせていただきました。
例えば先輩の「名刺が使えた!」との投稿を読んで実践し、とても良かったです。
せっかくの出会いをその時限りにしたくなかったので、助かりました。
また追加したいことがあれば投稿させてください。
では。
にいみ